知恵産業研究会報告書

第3章 京都企業の「知恵」の抽出

4.京都企業の「知恵」の特徴

4.1 分析フレームワークから明らかになった京都商工業の知恵

「技術開発型」アプローチでは「アイディア段階」に知恵を集中

「市場開拓型」と「技術開発型」のアプローチ間では、事業展開のスタート段階で知恵の使いどころに差があることが特徴的である。

「技術開発型」アプローチは、既存の強みとなっている技術に対し「さらに強みを高める」ことからスタートしている。そのため、既存の技術レベルからのブレイクスルーのためのアイディアが重要となる。図表24のマトリックスを見ても「アイディア段階」で非常に多くの「知恵」が使われていることが一目瞭然である。

また、既に強みとなっている従来技術水準から、さらなるレベルアップを目指すためには、これまでの常識にとらわれずに自由なアイディア発想のできる人材や環境整備への知恵の重要性も大きい。

「市場開拓型」アプローチでは「企画の具現化段階」に知恵を集中

一方、「市場開拓型」アプローチでは、現有技術で新たな市場を探索するところからスタートする。そのため、アイディア発想レベルではなく、いかにビジネスにつながる市場や顧客を意識した商品・サービス企画として具現化するか、「企画段階」が重要となる。言い換えれば、新たな市場への展開に気付くことよりも、それをどのように具現化するのかに多くの知恵を発揮している。

この場合、既に顕在化しているニーズに基づく企画は誰もがわかることであり、市場開拓型での成否は「近い将来に顕在化するであろう、現段階での潜在ニーズ」を的確に嗅ぎ取るための知恵こそが重要となる。ぼんやりとした方向性から、商品やサービス企画に落とし込むためには、この水面下に潜んだ、はっきり見えないニーズへの糸口を探る必要があり、異分野異業種の知恵の利用や、ニーズを確認してからの迅速な事業スタートへの組織的対応を可能にするフレキシビリティ、また敢えてターゲットを絞り込んで、ニーズの顕在化確度の高いターゲット領域への絞り込みなどの知恵が活きているようだ。

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