知恵産業研究会報告書
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はじめに
京都商工会議所 知恵産業研究会
委員長 位髙 光司
京都商工会議所は、「ニュー京商ビジョン」の基本方針として、「知恵産業のまち・京都の推進」を掲げました。この「知恵産業」という言葉を、みなさんはどのように理解しておられるでしょうか。私は、とても含意に富むメッセージだと感じました。そこで、より多くの京都産業界の方々に、よりわかりやすくこの言葉を伝える必要があると感じました。
都市という場には、人々の生業や暮らし、芸術や文化が集まり、新しい何かが生まれ続けています。京都は、千年以上に及ぶ日本の都としての時を積み重ねながら、常に歴史から学び、そして未来への創造を続けてきました。これは、絶えざるイノベーションが展開されてきた都市とも言えるでしょう。
そして、そこに積層されてきた人々の営みの結果こそ、京都の知恵であるはずです。それらの京都の知恵が活かされ、次なるイノベーションが、京都産業に様々に生まれ出す構造こそ、「知恵産業のまち」の基本であると感じています。
しかし、私たちにとって、「京都産業の知恵」は、あまりにも当たり前のものであり、改めて「見える」ようにしようとすると、なかなか難しいことに気づかされます。そこで、2008年6月に京都商工会議所では「知恵産業研究会」を発足させ、京都の産学公各界からの参加を得て議論を進めてきました。また、研究会の議論を、客観性や具体性のある「知恵」として明らかに表すべく、9月からはワーキング・グループを設置し、企業インタビューや統計的分析等、精力的な作業を続け、独自の視点から知恵の抽出を実現してきました。本報告書は、それら京都産業の強みの源たる知恵のエッセンスを「見える化」し、さらなる活用への提言をとりまとめたものです。
現今の世界的な不況の中、高付加価値で独自技術での優位性を持つ京都産業界の製品やサービスであっても、大きな打撃を受けていることは事実です。しかし、このような厳しい状況に耐え、未来への突破口の開発に挑むことも欠かしてはなりません。既に、この不況の底も一部見え始めているようです。今こそ、私たちは京都が誇るべき「知恵」という地域の資産を活かし、大きな時代の転換期を乗りきるべき時なのです。
この報告書は、「知恵産業のまち・京都」推進の宣言文であり、知恵を活かそうとするみなさんへの指南の書でもあります。企業活動は、「有言実行」が大切であり、結果を出してこそ真の価値となります。その主役こそ、京都産業を担う「知恵人(ちえびと)」たるみなさんです。ぜひ、オール京都の知恵を結集し、京都産業の元気を高めていきましょう。
最後に、この研究会の推進に当たり、活発な議論を頂いた委員の皆様、そして特に9月以後の半年余りの間に、十数回に及ぶ精力的な会合を持ち、本報告書の完成に多大な貢献を頂いたワーキング・グループの皆様に、心からの感謝の意を表します。