知恵産業研究会報告書

第4章 知恵産業推進支援に関する施策提言に向けて

1.施策提言への基本的な考え方

今回の調査によって明らかになった高付加価値経営を実現している京都産業の知恵を、さらに強化し、会員企業をはじめとする多くの京都企業が、新たに知恵の経営に取り組み、地域経済を活性化させ、向上させるための提言を最終章にまとめる。

今回の提言では、本報告書が京都知恵産業振興に関する中長期ビジョンを示す必要性と、産学公の京都産業振興各関係組織が計画している具体的施策展開との連動性を重視し、基本的な考え方と展開施策例を提言として示すこととした。

まず、京都企業の現状として右図のとおり大きく3層に分けて考える。

自社の強みを活かしている企業

本報告事例分析対象企業のように、既に自社の強みを自覚し、それを活かした経営を進めている。

自社の強みの活かし方を模索している企業

強みの自覚があるものの、それをどのように活かしてビジネスの成功につなげるかを模索している。

自社の強みに気づいていない企業

自社の強みに気づいておらず、ビジネス展開の方向性がつかみきれていない。

このような企業構成を前提にすると、京都知恵産業振興施策には、下記のとおり3パターンに大別されたアプローチが必要となることがわかる。

(1)知恵ビジネス企業のさらなるレベルアップ支援

層の質と量の向上
(2)強みを活かすための方向付け支援
層→層への引き上げ
(3)自社の強みに気づかせるための支援
層への啓発

「知恵産業育成ステージ」においては、(2)を中心とした新たな知恵ビジネスの創造を重点課題と位置づけつつ、継続的な(3)の普及啓発活動、(1)の観点からの優れた知恵の経営企業の強化支援を基本方針として取り組まれることが望ましいと考える。

また、今回の企業事例調査を通じては、知恵産業推進のための基盤充実に向けて、3つの観点からのとらえ方が重要となることも明らかとなった。

それらは、「人」、「場」、「情報」である。そして、これらの3つの観点をつなげるためには、知恵ビジネス創造に向かおうとする人々のネットワーク整備が重要となる。また、知恵ビジネス立ち上げへの実現可能性や企画潜在力を、客観的に評価できる場や、継続的な個別のビジネス育成支援も必要となろう。

産業界では、業種等を問わず、新価値創造に取り組める新たな力と資質を持った「人財育成」は強く求められており、最重点課題であることは明らかであった。従来の徒弟制や企業内OJTによる育成が困難となってきていること、価値模倣型の企業経営から新価値創造型へとシフトしていること、そして人材育成の拠点としての大学等の地域社会におけるあり方の再検討の時期を迎えていることからも、本提言の中心には「知恵人(ちえびと)づくり」という考え方が据えられるべきであると言える。

以上のような基本的な考え方に基づきつつ、「知恵産業のまち・京都」の積極的推進のためには、産・学・公の連携によるオール京都の「知恵のまちづくり」に向けた力の結集を図るべく、以下の3つの観点からの知恵産業推進施策を提言とすることとした。

(1)知恵人(ちえびと)づくり
【人】
(2)知恵の獲得と価値化の場づくり
【場】
(3)知恵の蓄積と活用のしくみづくり
【情報】

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