知恵産業研究会報告書
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第3章 京都企業の「知恵」の抽出
4.京都企業の「知恵」の特徴
4.1 分析フレームワークから明らかになった京都商工業の知恵
技術開発型では「ウォンツ創造」、市場開拓型では「顧客の無理難題」に市場に向かう知恵を使う
また、技術開発型の場合、基本姿勢は従来分野における製造技術の工夫や改善である。ただし、そのような技術開発姿勢が、結果的に新市場への進出を可能にしている場合が多い。その際に、従来(既存)分野で必要であることが明らかなモノやニーズではなく、新規分野での技術の活かし方を探る必要がある。その結果、顧客の「欲しい」という気持ちを湧きおこし、全く新しい付加価値の高いモノの実現につながるのであり、技術開発型ではアイディア段階に必要な知恵として位置づけられる。
一方、市場開拓型では顧客が求めているけれど対応しきれていないニーズ、すなわち顧客の無理難題やわがままをとらえ、それに迅速に対応していくことが重要になる。
オンリー・ワンの強さを獲得するために、
あえて黒子に徹して市場拡大の可能性を確保する「技術開発型」
主役に打って出て市場拡大を図る「市場開拓型」
特に技術開発型では、基本的に部品レベルや要素技術などの得意分野に特化して、川下最終商品には手を出さない傾向がある。すなわち、オンリー・ワンの強みを持つ企業は、敢えて黒子に徹することで、より多様な顧客獲得の可能性を広げ、低価格競争にも陥らずに適性利益を確保できるという知恵である。
これに対して、市場開拓型では逆の傾向が見受けられる。例えば襖の一部であった唐紙がポストカードになったり、彫金教室がジュエリーになったり、九条ねぎがカットねぎとして最終消費者に届いたり、従来の黒子型商品やサービスが、より川下に進出し、最終商品として市場での知名度を上げ、ブランド価値や付加価値を上げている。
また、このような新市場展開では、価格設定も事業の成否に大きな影響を及ぼす。数百万円の友禅の着物を作っている企業が、バッグへの新展開を果たす上では、呉服市場における既存の知恵と、バッグ市場の新たな知恵の巧みな使い分けが必要であり、特に新たな競合商品との比較における値頃感の発見には知恵が必要とされている。