知恵産業研究会報告書
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第3章 京都企業の「知恵」の抽出
2.分析フレームワーク
2.2 分析フレームワークの概説
(1)「事業展開ステップ区分」
分析フレームワークの横軸は、企業が事業に取り組む中で自らの強みとすべきポイントに気づき、また新たなビジネスの展開に向けて「知恵」の使いどころがわかりやすい分類となる図表21の「事業展開ステップ区分」の5つの区分とした。
図表21.分類軸「事業展開ステップ区分」
- アイディア段階:
- 既存の素材・技術等の新しい組み合わせや、新たなマーケットチャンスの発見など、事業のスタートとなる「発想・着想」段階での付加価値向上への取り組み
- 企画段階:
- アイディアをビジネス企画へと具現化していく取り組み、ビジネスモデルの考え方・その裏付け・課題・戦略等の検討による付加価値向上へのプランニング
- 研究・開発段階:
- 商品または事業企画に基づき、要素研究や応用技術開発、またビジネスモデル実用化への試行など、技術や市場創造における付加価値向上への取り組み
- 生産段階:
- 新たな商品の製造や製造方法の改良などものづくりや、サービス事業におけるシステムづくりにおける付加価値向上への取り組み
- 流通・販売段階:
- 流通・販売の方法や形態など顧客と接する場面における付加価値向上への取り組み
(2)「新価値創造アプローチ区分」
分析フレームの縦軸には、顧客にとっての新しい価値創出へ向けたアプローチの違いによって2タイプの区分を設定した。
第1には「技術開発型」がある。これは、具体的な顕在市場やターゲットとする顧客を明らかにする前に、先ず自社の「技術やサービスの新たな開発、改善、改良」による技術レベルを向上させた上で、結果的にその技術シーズを活かせる市場機会を的確にとらえ、新たな価値創造に結びつけるアプローチを指す。
2つ目のアプローチは「市場開拓型」である。企業が強みとして既に有する技術やサービスをもとに、新たな用途の可能性や具体的な対象市場の開拓を手がけ、その市場に必要かつ最適な技術の開発や改良を進めて新たな価値創造に結びつけるアプローチを指す。
これら2つのアプローチは、最終的には新たな価値創造に到達するが、最初のアプローチを「技術開発」「市場開拓」のどちらを重視してスタートするかに違いがある。また、今回の知恵産業研究会では、新たな価値の創造という観点で、2次元の座標では表現の困難性があると考え、図表22のとおり、3軸目に「価値」軸を置いた。すなわち、単なる「新技術×新市場」による事業展開では、コモディティ化によるコスト競争に巻き込まれるなど、持続性のある優位性確保が困難となる恐れがあり、競合他社の追従を困難にする新たな「価値」への展開が重要であると考えた結果の第3軸の設定である。
このことは、今回のヒアリング調査の結果からも京都のオンリー・ワン戦略の強さとして感じ取れたことであり、3次元座標での表現が適当であると判断した。
図表22.分類軸「新価値創造アプローチ区分」
- 技術開発型:
- 先ず、技術やサービスの新たな開発、また改善・改良などによる向上により技術シーズを確保し、結果的にそれを活かせる市場機会をとらえて新しい価値創出を進めるタイプ
- 市場開拓型:
- 既存技術やサービスをもとに、新しい用途や市場開拓に進出し、その市場に必要な技術開発や改善を進めることにより、新しい価値創出を進めるタイプ