知恵産業研究会報告書
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第2章 京都産業の優位性分析
1.高付加価値経営を実現する工業型企業
1.1 製造業における京都市企業の優位性
(2)京都の製造業の付加価値からみた特徴
企業が事業活動を通じて新たに生み出す価値として定義される「付加価値」について、図表2で示された粗付加価値額上位20都市で傾向を見ていくことにする。
【1】従業者1人当たりの粗付加価値額
付加価値が効率的に生み出されているかどうかという「生産性の高さ」について考えると、製造業で付加価値を生み出す最も重要な生産要素は労働力(=従業者)であると言える。
そこで、従業者1人当たりの粗付加価値額(=労働生産性)により企業の人的効率を見ると、京都市は上位20都市のうち15位となる。(図表7)但し、ここでも京都市より上位は、大規模な装置産業型企業や自動車製造企業の生産拠点を抱える都市となっていることが確認できる。
また、過去5年間のデータで全国と京都市を比較すると、京都市は全国平均とほぼ同じ水準で推移している。
ここで2006年の全国の1事業所当たりの従業者数を求めるとおよそ32名となる。これに対して、京都市では平均従業者数はおよそ23名となり、従業者規模で全国平均と京都市において差が生じている。したがって、同じ従業者規模で比較するため全国の従業者規模20?29名の労働生産性を見ると、京都市は全国(従業者規模20?29名)を大きく上回る水準となっている。このことから、同等規模では京都市は全国よりも労働生産性が十分に高く、従業者1人当たりの付加価値額が高いことがわかる。
(※「1事業所当たりの粗付加価値額」は"資料編"参照)
図表7.従業者1人当たりの粗付加価値額(労働生産性) (平成18年)
順位 | 市長村 | 従業員1人当たりの 粗付加価値額(万円) |
1 | 田原市 | 46.8 |
2 | 豊田市 | 35.43 |
3 | 市原市 | 33.91 |
4 | 大分市 | 31.84 |
5 | 倉敷市 | 30.85 |
6 | 和歌山市 | 3072 |
7 | 川崎市 | 24.18 |
8 | 磐田市 | 22.12 |
9 | 四日市市 | 20.97 |
10 | 太田市 | 18.38 |
11 | 神戸市 | 16.37 |
12 | 姫路市 | 15.13 |
13 | 横浜市 | 14.85 |
14 | 北九州市 | 14.77 |
15 | 京都市 | 14.12 |
16 | 堺市 | 13.76 |
17 | 静岡市 | 13.71 |
18 | 大阪市 | 13.45 |
19 | 名古屋市 | 12.9 |
20 | 浜松市 | 11.7 |
出所:工業統計「市区町村編」「産業編」データ(経済産業省経済産業政策局調査統計部)
※京都市企業の2006年平均従業者規模23名
【2】付加価値率
製造品出荷額に対する粗付加価値額の比率「付加価値率」について考えると、この値が高いほど、高付加価値製品を市場に供給していると言える。
そこで、付加価値率を見てみると、京都市は、和歌山市・大阪市に次ぐ全国市町村中3位となる。(図表8) その上位3都市の粗付加価値額の産業別構成比率を見ると、和歌山市で鉄鋼業45.8%、大阪市では医薬品等も含まれる化学工業が32.7%と高く、粗付加価値額において大きな割合を占めている。これに対して、京都市では電子部品・デバイス製造業が最も大きな比率(15.0%)を占めている。こうした内容から、京都市の産業は、大規模な装置産業型でないにもかかわらず、高い付加価値率を実現していることが明らかとなる。(図表9)
過去5年間のデータでそれぞれの推移を比較すると、京都市の付加価値率は図表6でも見た通り全国平均を上回っており、その水準を維持しつつ推移している。また、2005年から2006年にかけての付加価値率では、全国平均・和歌山市・大阪市が低下傾向を示す中、京都市は上昇に転じており、上位2都市との差が相対的に小さくなってきていることが確認できる。こうした点からも、京都の製造業は高付加価値を保っていることがわかる。
図表8.付加価値率(平成18年)
順位 | 市長村 | 付加価値率 |
1 | 和歌山市 | 48.50% |
2 | 大阪市 | 47.60% |
3 | 京都市 | 45.30% |
4 | 神戸市 | 41.70% |
5 | 静岡市 | 40.60% |
6 | 名古屋市 | 39.50% |
7 | 北九州市 | 38.30% |
8 | 浜松市 | 37.80% |
9 | 磐田市 | 35.60% |
10 | 太田市 | 34.10% |
11 | 横浜市 | 33.10% |
12 | 姫路市 | 31.40% |
13 | 田原市 | 30.00% |
14 | 豊田市 | 29.60% |
15 | 川崎市 | 28.90% |
16 | 大分市 | 28.40% |
17 | 四日市市 | 26.30% |
18 | 堺市 | 25.90% |
19 | 倉敷市 | 25.60% |
20 | 市原市 | 15.30% |
出所:工業統計「市区町村編」データ(経済産業省経済産業政策局調査統計部)
(*付加価値率(%)=粗付加価値額/製造品出荷額等)
図表9.産業別 粗付加価値額(全国・和歌山市・大阪市・京都市) 平成18年12月31日現在
さらに、製造業の産業別の付加価値率について、全国平均と京都市を比較すると、全24業種のうち、約半数の11業種において、それぞれの業種の全国平均に対して優位性があることが、統計的検定結果からも得られた。(図表10,※京都市の「石油製品・石炭製品製造業」、「ゴム製品製造業」、「情報通信機械器具製造業」3業種は数値不明)
(※「付加価値率比較 検定結果」は"資料編"参照)
図表10.産業別 付加価値率(全国・京都市) 平成18年12月31日現在