第三者承継

ノウハウと実績を蓄えた事業者への承継による発展

宮田さん（左）と松本さん（右）

10年前、亀岡市内のショッピングセンターの精肉店を引き継いだ松本恵美子さん。看護師として働きながら経営をなんとか切り盛りしてきたが、今回、嵯峨嵐山で老舗の精肉店を営む京都嵐山中村屋へ事業譲渡することで、お客様や取引先、そして従業員の雇用を守ることができました。

10年前に引き継いだバトンを手渡しし
ショッピングセンターの賑わいを守る

新鮮な精肉や揚げたてコロッケが好評

　看護師だった松本さんが、後継者不在の精肉店から事業を引き継いだのは、今から10年前のこと。同じショッピングセンター内で寿司店を営むご主人の昭さんのバックアップもあって順調に経営を続けてきたが、「コロナ禍の影響で看護師の仕事が忙しくなり、このまま両立していくことが難しくなった」と振り返る。店を継いでくれる親族や従業員もいなかったため、取引銀行である京都北都信用金庫に相談し、京都府事業承継・引継ぎ支援センターを紹介してもらった。看護師との兼業で、店の売上拡大や顧客開拓に向けた十分な取り組みができなかったことを踏まえ、専門的なノウハウを持った同業者へのバトンタッチを目指した。
今回、事業譲渡の相手先に選んだのは、嵯峨嵐山で老舗の精肉店などを営む京都嵐山中村屋だった。「大手スーパーでの店舗展開にチャレンジするなど、新たな肉の提案スタイルを模索していた」と宮田さん。亀岡市内での出店は初めてだったが、複数の精肉店や鮮魚店、青果店が隣り合わせで軒を並べるショッピングセンターならではの販売スタイルにも魅力を感じたという。「他店と切磋琢磨しながら、私たちの事業を成長させていける」と話す。

知識や経験、信頼関係を引き継ぎ 自社の強みに生かした事業拡大を目指す

精肉以外にも品揃えが充実

2020年10月、無事に事業譲渡が完了した。当初、地域に縁のない店がショッピングセンターの事業者やお客様に受け入れられるかという不安はあったが、すぐ近くに店を構える松本さん夫婦がきめ細かにフォローや相談に乗ってくれ、スムーズなスタートを切ることができた。松本さんの希望どおり、従業員をすべて継続雇用し、彼らが培ってきた知識や経験、お客様との信頼関係を生かした商品、サービスを提供することで、「地域ナンバー1の店づくりを目指す」と宮田さん。意欲あふれる新店長のもと、ブランド力のある極上肉や、揚げたてさくさくのコロッケなどが好評で、以前に比べて売上は大きく向上しているという。ショッピングセンターでの成功をステップに、各地域で多店舗展開していきたいと意欲を示す。
10年前に引き継いだバトンを信頼できる事業者に手渡しすることができ、「これからは消費者として盛り上げていきたい」と松本さん。自由になった時間を活用して、看護師として活躍の場を広げるなど、新たな人生の目標に向かって歩み始めている。事業譲渡を終え、宮田さんと松本さん、二人の夢が今まさに実を結ぼうとしている。