第三者承継
守ってきた看板と信頼を若い経営者に託す!
精華町内で長年にわたって自動車整備業を営んできた相楽自動車。創業者の山田豊さんが事業の引継ぎ相手に選んだのは、中古車販売会社の若き経営者、久保健社長だった。
お客様や従業員を大切にするという思いを共有し、株式譲渡という形で会社の未来を託すことで、新たなビジネスの芽が膨らんでいる。
会社概要 | 売り手 | 買い手 |
---|---|---|
会社名 | 相楽自動車株式会社 | 株式会社ケイスタンダード |
代表者 | 山田 豊(78歳) | 久保 健(39歳) |
住所 | 京都府相楽郡精華町下狛前川28番地 | 京都府相楽郡精華町下狛清神前23番4 |
事業内容 | 自動車整備 | 中古自動車販売 |
創業 | 1966年 | 2015年 |
資本金 | 1,000万円 | 500万円 |
従業員数 | 5人(内パート1人) | 6人(内アルバイト4人) |
売上高 | 非公表 | 非公表 |
URL | - | http://kstandard.info/ |
※年令は2020年1月1日現在
世代間の価値観の違いを乗り越え
株式譲渡で会社の売却を決意
山田さん
相楽自動車は、50年以上前に山田さん(78歳)が精華町で創業した、車両のメンテナンスや修理等を専門に行う整備工場だ。自身も2級整備士の資格を有し、指定工場(民間車検工場)の認定を受けるなど、地域に密着したきめ細かなサービスでお客様の信頼を獲得してきた。
自動車整備工場
一方、年齢を重ねるにつれ、「後継者の問題と向き合うようになった」。二人の息子や従業員の中から手を挙げる人は見つからなかったため、山田さんにとって身近な相談窓口だった地元の「精華町商工会」を訪ねたことがきっかけとなり、「京都府事業引継ぎ支援センター」との連携による支援が始まった。従来の顧客と従業員を守るため、廃業ではなく株式譲渡という形での引継ぎを希望していたという山田さん。2018年6月、本センターの連携機関の一つである地元の金融機関を通して、同じ地域内で中古車を販売するケイスタンダードという会社を紹介してもらった。
久保さん
候補先の会社社長を務める久保さん(39歳)は、孫ほど年齢の離れた若い世代。5年前に精華町内で起業し、他所では手に入らないような希少な車、市場に流通していないニッチな車を中心に全国にネット販売することで業績を拡大してきた。職人気質の山田さんとは経営感覚や仕事に対するスタンスが異なり戸惑うことも少なくなかったが、会社も近く、商工会の会員同士ということもあり、商工会や本センターの担当者が双方の思いに耳を傾け、客観的な立場で情報提供やアドバイスを行い、また顔合わせの場を設けることで距離感が縮まった。「やり方は違うが、お客様や従業員を大切にするという気持ちは同じ。若い経営者に相楽自動車の未来を託してみようと思った」と、山田さんは株式譲渡を決めた経緯を振り返る。
各団体・機関がそれぞれの役割を果たし
状況に応じたスムーズな支援
久保さんにとって、社内で整備工場を持つことは創業以来の夢だったが、設備も整備士も自前で揃えることは難しく、今回のマッチングは事業拡大の大きなチャンスととらえていた。「優秀な整備士を抱え、指定工場を持つ相楽自動車には魅力を感じた」。
当初は、企業価値の評価方法や株式譲渡の手順、契約書の作成など、企業の買収に必要な知識がまったくなかった。また、株式の譲渡金額について双方の希望に隔たりがあり、折り合いをつけるのは時間がかかったという。しかし、「自らの希望価格に固執するのではなく、創業者の50年間の思いやお客様からの信頼など、目に見えない価値を評価することも大切」と久保さん。
互いの顧問税理士が条件面の確認をしあったり、資金調達については地元金融機関がケイスタンダードの将来性に可能性を感じて支援してくれるなど、「プレイヤーが一人でも欠ければ成立しなかったかもしれない」と話す。
お客様と従業員のために!
M&Aの成果を事業拡大に生かす
中古自動車展示場
相楽自動車とケイスタンダードの顔合わせから、1年余りで事業引継ぎについて合意。
2019年9月には関係者が集って、精華町商工会で調印式も開催された。現在、山田さんは顧問として会社に留まり、既存顧客の対応や従業員へのフォローアップなどで忙しい日々を過ごしている。「相楽自動車というブランドを残せたことは大きな意味があった。これからも地域に愛される会社であり続けてほしい」と願う。
新たなオーナーとなった久保さんは今回の事業引継ぎにより、車の仕入れから販売、点検・整備までワンストップで提供することが可能となった。アフターメンテナンスなどを充実させることで、地域の顧客の掘り起こしにもつなげていく。「販売部門と整備部門で名前が異なるが、志を同じにする一つの会社。これからは双方の従業員が一体となって歩んでいきたい」。
事業引継ぎで生まれた新たなビジネスの芽が今、精華町から大きく育とうとしている。