知恵-1グランプリ

顔料箔。それは、インクを使わない印刷
関西巻取箔工業株式会社

今から約70年前、西陣織の金糸の材料加工技術を応用し、金粉と樹脂を使った顔料箔を日本で初めて実用化。シルクスクリーンや塗装などの印刷技術は、液体インクを塗布して乾かすウェットコーティングが一般的だが、同社では固形化されたインクを熱転写、または貼るドライコーティングを提案し、印刷加工の世界に革新をもたらした。

自動車や医療機器の部品、高級ブランドのパッケージ等において、ミクロン単位の精密な印刷や塗装が求められている。今回、こうした市場ニーズに応え、1/1000mm~1/100mmでインクの厚みを制御し、均一に塗工された顔料箔を開発。熱転写箔や機能性フィルム、塗装シートなど、様々な活用シーンへの展開を目指す。一方で、近年環境への影響が指摘されるVOC(インキや塗料などに含まれる揮発性有機化合物)についても、顔料箔ではインクからVOC物質を除去してユーザーに提供するため、環境負荷の低減はもちろん、製造現場の作業負担を軽くし、健康などへの危険リスクを回避することにもつながる。

SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが世界的に広がる中、市場の成長が著しいプリンテッドエレクトロニクスの分野において、従来の塗装等から精緻で安全な熱転写顔料箔に切り替える動きが加速している。今後は、全国各地の印刷系企業と連携し、世界的企業からの受注にも対応できる生産体制を構築することで、熱転写用顔料箔の開発・製造で独自の地位を確立していく。

■委員長の目(龍谷大学 名誉教授 佐藤 研司 氏)

顔料箔を使った転写による印刷という技法は、環境負荷やVOCによるリスクを回避する印刷加工の革新的なものといえる。金糸にルーツを持つ特殊なコーティング技法や箔の厚みのコントロールなど、専業メーカーとして蓄積された知恵が競争力の源泉となっている。対外的な情報発信も積極的に行い市場の開拓と認知の浸透に努めている。

<会社概要>
関西巻取箔工業株式会社
代表者 : 久保 武久
住所 : 京都市左京区大原戸寺町368番地
TEL : 075-744-2326
Web : http://www.kanmaki-foil.com/
<事業概要>
熱転写用顔料箔製造

閉じる